工場改善の取り組み
永沢工機では、15年前から積極的に“工場改善”を行ってきました。 弊社が考える“改善”とは、最新鋭の設備やシステムを導入することではなく、経営者も含めた関係者全員が現場に密着し、問題を顕在化させ、その一つひとつに知恵を絞りながら解を見出し、工場としてのベストな状態を追及し続けることです。
「高品質・短期納期を実現した改善」「まとまる台車」「ワークショップ」などの改善活動を続けてきたことで、「納期短縮」「品質向上」「コストダウンへの努力」「精密で複雑な要望に応える」などのメリットを、お客様にご提供できるようになりました。
実際行われた大規模改善の内容
実施している
3つの改善活動
- その1作業改善 「職場ミーティング」「赤字物件改善プロジェクト」
- その2生産システム改善 「まとまる台車」「進行工程表」「生産改善プロジェクト」
- その3マインド(意識) 「未来会議」「改善チーム」「新たなチャレンジ」
改善に「これでよし」は、ありません。過去、大規模に行った“改善活動”は、次のステージに入りました。私たちが目指す“改善活動”は、変化の時代にいち早く適合すべく常に一歩先の手法を考えるところにあります。現在は、さらなる高みを目指し、3本の大きな柱を掲げて取り組んでおります。
現在の主な改善活動
作業改善
一番身近な取り組みが毎週末の「職場ミーティング」です。プログラム(PRG)、NC、マシン(MC)、アッセン(AC)、検査、出荷、営業と、部署ごとに話し合いを持ち、その週の振り返りを行い次週の改善点と到達点を明確にしています。
赤字物件などコスト部分で抜本的な見直しが必要な物件については、現場の声を「赤字物件改善プロジェクト」が吸い上げて作り方の改善を図っています。
生産システム改善
社会が大きく変化するなか製造業を取り巻く環境も大きく変動しています。お客様のご要望と期待に応えながら会社をより良い方向に導こうと中堅社員が主体的に取り組んでいるのが「生産改善プロジェクト」です。社員のスキルを“見える化”させた「スキルマップ」を作成したり、若手社員で活動している「改善チーム」から届く課題解決のために奔走しています。
平成21年7月3日に“日本IE文献賞”改善賞を受賞した「まとまる台車」は、過去の「Sプロジェクト」や「5S活動」※による整理・整頓の取り組みから生まれた手法です。まとめて大量に作るのではなく、台車が工程間を決められたルールに従って順番に回り、順番に作り現物を台車に乗せて流すというシステムです。当初は混乱しましたが、改善を重ねるうちに「リードタイム10倍アップ」という劇的な改善に成功しました。今後については、時間の経過とともに目的や意義が薄まることのないよう目的と意義を全社員で共有しながら、台車内の構成を法則化するなどの改善を図っていきたいと考えています。
※5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾のこと。
マインド(意識)
入社3年以下の若手が活動する「改善チーム」は、若いうちに改善の大切さを理解し、その手法を覚えることを目的にしています。チームで先輩や講師から改善のレクチャーを受けたり、他の工場見学に出かけるなどして見聞を広めたり、社内の改善提案の整理をして「生産改善プロジェクト」に報告するなどの役目を担っています。
年度末に総括と報告、表彰を行う「未来会議」は、平成21年からスタートしました。チームごとの具体的な改善提案とその取り組みについて発表したり、社員アンケートによって選出されるMVP制度は、さらなる改善活動や精密で複雑な新しい仕事にチャレンジしていこうとする社員のモチベーションになっています。
チームリーダーの声
八巻直人 設計・営業課 課長
プレス量産前の試作を含め、板金加工のあらゆるデザインの設計、お客様へのご提案、使用する機械や加工の順番を考える工程設計、「まとまる台車」の構成も担当しています。弊社では、常に改善のスピリットを持ち続けるために、毎月1回全体朝礼で各部門ごとに持ち回りで発表を行っています。新年度がスタートする6月と1月(中間レビュー)に開催している「未来会議」は、改善や課題の中長期目標を明確にし、全員で共有する大切な場です。設計・営業課の改善で、手応えを感じているのが生産管理、納期管理、新たな受注のために昨年から導入した「進行工程表」です。少量多品目を扱う緻密な生産スケジュールを可視化したことで個々に今、何をすべきかがわかります。今後は、自身の仕事に深く精通しながら広くマネジメントもできるタフな人材を育成しながら、他社ではできない精密で複雑な仕事にも果敢にチャレンジしていきたいと思っています。
北沢 哲 製工課 課長
年配の職人と若者と年齢が離れてはいますが、各部門の連携も取れている働きやすい職場です。入社して1年目は誰でも我慢ですが、2年から3年くらい経って思ったように仕事が進むようになると俄然面白くなります。仕事をするほどに技術も磨かれていくのを見ていると頼もしく思います。会社の心臓部ともいえる製工課が、一丸となって追及しているのが「品質の安定」と「加工品質の効率と向上」です。緻密で複雑な仕事をこなす現場では、常に見直しが求められます。今、果敢に進めているのが「手順書(作業標準)」の改訂です。できるだけわかりやすくすることで、どの仕事も人を選ばずにできるようにしていきたいと思っています。もう一つが加工技術のデータ化です。前の情報を残しておくことで作業の効率化が図れます。昨年から毎月5件を目標に進めているのですが、すでに190件を超えました。継続あるのみです。
吉田直也 製工課 係長
現場は、いつも若い世代の活気にあふれています。私たちの仕事には、1物件ごとに目標時間が設定されています。目標通りに加工が進まなかったものについては、赤字物件として各部署のリーダーが集まり改善の話し合いを持ちます。それが「赤字物件改善プロジェクト」(月2回開催)です。会議には、見直しの対象となる製品に関係する各部署のリーダーが集まります。技術者だけでなく営業担当者も一緒に改善点を探ります。まずは行動を起こし、見えてきた改善点を現場に落とし込むことを続けてきたおかげで、物件ごとに品質向上、納期短縮などの成果が表れ始めています。試みがうまくいかなかったときの手当てもスピード感を持って対応しています。近年、マネジメントに関する意識を高く持ちながら仕事をする若手が増えてきたこともうれしい限りです。これから伸びていくポテンシャルの高い職場だと思います。
阿部憲子 設計・営業課・製工課 係長
チャレンジを「よし」とする懐の深い環境が弊社の魅力です。代表的なチャレンジの一つが「まとまる台車生産方式導入による改善活動」です。平成26年から取り組んでいる「生産改善プロジェクト」は、まとまる台車で生産技術の改善賞を頂いた時の経験を力に、スタートさせました。自分たちの職場を自分たちの手でより良いものに改善し、生産性を向上させ、利益を生む組織にしていくことを目指しています。主な取り組みとして「スキルマップ」があります。作業工程ごとに必要なスキルレベルを割り出し、社員の到達点を一覧表にして配置換えやヘルプ時の手がかりにしたり、個々のキャリアアップにつなげたりしています。今後は、スキルマップの活用法について勉強会を開催するなど議論を深めて行きたいと思っているところです。3年目に入っての感想ですが製造現場では、日々様々なことが起きます。そうした中で週1回、1時間、各部署の代表者が課題や成果、改善案を持ち寄って開く会議は、大切な振り返りの場になっています。今後も「場」を続けながら、さらに高いレベルでの改善を具現化して行けるよう力をつけていきたいと思っています。
阿部祐太 AS(溶接)所属
平成28年度『ふくしま産業競争力強化支援事業※』担当者
入社以来、NC、ASなど積極的に様々な仕事を担当してきたこともあり、ひと通り精密板金の仕事をこなせるようになりました。オールラウンダーを意識するようになった理由の一つに、社内で取り組んでいる様々な“改善”があります。現場に落とし込める“改善”にしていくためにも、どの部署も知っておきたいと思いました。最近の気づきは、生産現場の改善と会社全体の仕組みの改善は、車の両輪だということ。そして“改善”には終わりがないということです。平成28年度「ふくしま産業競争力強化支援事業」の担当者として意識しているのもそこです。2S(整理・整頓)活動、工程改善など、新たな目線で取り組むべき課題がたくさんあると思います。お陰様で弊社は、若い社員が多い馬力のある会社なので、志し高く時代に適合した改善に挑もうと思っています。
※平成28年度「ふくしま産業競争力強化支援事業」 県内の企業を対象(公募)に、福島県産業振興センター及び福島県が有名自動車メーカーの協力を得て、生産性向上や製造現場の改善指導を行うことで企業の競争力の向上を図ろうという事業。実施期間:平成28年7月~平成29年2月