永沢工機の仕事 | こだわりの設計・展開
設計に関するQ&A
『設計Q&A』を担当する北沢です。 普段はお客様から頂いた図面を元に仕様の確認を含め見積もり提出から製造の手配までを手掛けています。また、イメージ図や外観図等からの板金製作図も作成しています。今までに経験した事、永沢工機としての蓄積されたデータを活かし、皆様に役立つ情報をお届け出来たらと思っています。随時更新していきますので宜しくお願いします。
板金と聞くとみなさんが一番最初に想像するのは「車の修理工場」だと思います。一般的に言う板金屋さんですよね。でも、永沢工機で行っている板金とは『精密板金』という分類の板金なのです。板金加工とは鉄板やステンレス、アルミ板等に、穴開け加工や切断、曲げ加工や溶接等をさまざまな工作機械で加工する事、簡単に言えば金属の平板に、加工を施して製品を成形することです。
板金屋さんと言っても色々な種類があり“車”“建築”“精密”等が代表的なものですが各会社により加工機械も違いますし独自のノウハウを持っていると思います。ここでは永沢工機が持っているノウハウを含め板金図面を引く時に少しでも役に立つような情報を公開しようと思います。偉そうな事を言っておきながら私もまだまだ分からない事の方が多いのでこの機会にみなさんと共に成長していければいいなーと思っています。
お客様からの問合せ等で一番多いのが「とりあえず図面を引いたけどこの形状で問題ない?」と言う物です。納期の短い場合では最初の仕様決めに時間が掛かると御希望通りに製品をお渡しする事が出来無い場合があります。 その様な事を解消する為にも是非、永沢工機のノウハウをご活用下さい。
- Q1 箱状の板金内部に機器取付け用の金具を溶接したいのですが位置決め等に用いられる「ハーフシャー」とはなんですが?また注意点等あれば教えて下さい。
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A
位置決め等に用いる「ハーフシャー」という手法があります。「ハーフシャー」とは丸や角等の押出し(半抜き)を行い相手部品に勘合する穴を開け、組合わせる手法です。尚、弊社保有金型の寸法や形状については別途、お問合せ下さい。
- Q2 「ハーフシャー」を使用する利点、また注意点等ありますか?
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A
板金製品で何らかの機器を取付ける場合に取付用の金具等を用いる場合がありますがあらかじめ取付け位置が決まっている時は溶接等にて固定します。半抜きの状態にし(凸形状)、丸穴を開けた部材と合わせ位置を決めます。また、ストッパー等の用途に使用する場合もあります。
利点:NCTで加工しますので寸法精度が高くバラツキが生じない為、数量が多い製品に適していると言えます。
注意点:貫通穴では無いので形状は残る為に体裁面(外観面)には適しません。 外観部品に使用する場合は溶接にて穴埋め等の処置が必要になります。
- Q3 「ハーフシャー」の具体的な形状を教えて下さい。
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A
図は標準的な丸形状のハーフシャーです。 押出し方向は上向き、下向きどちらでも可能です。 また、角形状も加工できます。
- Q4 「ハーフシャー」の押出し寸法に限界はありますか?
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A
押出し部の限界寸法は「h=0.5t」(max)となります。
<最大径(ΦA)>
金型のサイズ及び押出し方向により変わりますが金型のサイズ別に下記にまとめました。- 1-1/4”上向き ⇒ Φ15.0
1-1/4”下向き ⇒ Φ25.0 - 1/2”上向き ⇒ Φ6.0
1/2”下向き ⇒ Φ9.0
- 1-1/4”上向き ⇒ Φ15.0
- Q5 「ハーフシャー」加工時のよくある失敗例等教えて下さい。
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A
よくある失敗例としては「ハーフシャー」加工後に他の金型で凸を潰してしまったと言うのが一番あると思います。また、外形抜き用金型で潰れた、曲げ加工時の曲げ型で潰した等よく耳にします。設計時には端面からの距離(曲げ部含む)を注意する事が必要です。小さい部品等ですと最小ピッチを考慮せずハーフシャー型自身で潰れたという事例です。最小ピッチの目安は次の通りです。
「ピッチ=10mm+ΦA」
サイズにより異なりますが目安として「ピッチ=10mm+ΦA」とお考え下さい。
- Q6 「タップ(タッピング)」タップ加工とはどんな加工ですか?
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A
タップ加工とはネジやボルト等で部品を固定する為に母材にあらかじめネジ山を作る加工です。(タッピング加工とも言います)ドライバーなどでネジを緩めたり締付けたりした事は誰しもあると思います。タップには「インチサイズ」「メートルサイズ」等様々な種類があり、 ネジ山の寸法・下穴の寸法等、規格に添って管理しています。
- Q7 「タップ(タッピング)」タップ加工の寸法指定をする際に注意点等あれば教えて下さい。
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A
タップ加工においては御使用をお考えのネジサイズを基に寸法指定して頂ければ 問題はありません。が、曲げ部に近い場所を指定する時にはご注意願いたい事があります。 曲げ加工とは簡単に言うと力を加えて変形させる事ですので、曲げ部に近い場所での タップ加工は曲げ加工時の変形に巻き込まれ、均一に加工したネジ山が崩れてしまいます。曲げ加工後にタップ加工をすれば問題はありませんが形状等により機械加工が出来ない場合があります。(手作業での加工になると当然の事ながらコストに反映してしまいます) 基本的に曲げ加工前の加工となりますので平板の状態で機械加工が出来る事が原則です。 外観品では無い部品やコストを押えたい製品などでは切欠き等を入れて変形を防ぐ設計をお考え下さい。 実装品の取付け位置は余裕を持たせた設計を心掛けて下さい。
タップの大きさと加工板厚により曲げ部からの最小寸法には違いがあります。 詳しい寸法等は別途お問合せ下さい。(最小寸法とは基本的な工程の流れに沿った場合の事です。 基本の流れ:抜き加工→タップ加工→曲げ加工)
- Q8 「バーリング」タップ加工をしたいのですが素材の板厚が薄くネジ山の数が足りません。 どうすれば良いでしょうか?
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A
タップ加工でのネジ山が確保出来ない薄板での製作の時に有効な加工が「バーリング」です。バーリングとは薄板使用時のタップ加工部にネジ山を確保する為の成形加工です。タップの下穴径と同寸法の筒状の突起を作り、ネジ山を確保します。(下図参照)
厚めの板を溶接し通しのタップ加工をしたり、ナットを溶接するなどネジ山の確保の方法は色々とありますがバーリングはコストを押えた良い加工方法だと思います。
- Q9 「バーリング」加工時の注意点はありますか?
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A
バーリング加工は金型による成形加工ですのでバーリング通しの間隔が近すぎると加工時に金型で潰してしまいます。隣接するバーリング加工を行う際は注意が必要です。 また、曲げ加工部に近すぎる場合も曲げ型に干渉し潰れる場合があります。 弊社ではバーリング逃がし型や特注型製作によりお客様のご要望にお答え致しております。 (曲げ部からの最小寸法、バーリング間最小ピッチ等、別途ご相談下さい)
- Q10 「皿もみ加工」皿ネジでの部品固定を考えています。設計段階での注意点等教えて下さい。
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A
皿もみ加工は名前の通りに素材に皿状の窪みをつける加工方法です。(下図参照)
加工形状には2種類あり(上図)、A,Bの違いは皿もみ表面にストレートの落し込み部分があるか無いかの差で機能としてはどちらも皿ネジが表面から出張らないのでネジによる組立後にはフラットな面が出来上がります。 皿ネジの大きさは規格で決まっていますので使用するネジの大きさに合わせた寸法指定をしましょう。寸法的な事は分からないと言う事でも大丈夫です。使用するタップの大きさを指定すれば規格に添った加工を致します。
(例:4-M4用皿もみ 2-M3皿 等)もう一つの注意点は使用する板厚、皿ネジの大きさにより皿もみ深さが素材の厚さを越してしまいます。その場合、皿ネジで締付けてもネジが浮いてしまい固定する事が出来ません。タップ側の表面(取付け側)に面取り加工を施しネジの浮きを解消しましょう。CAD等で断面の図を書き、2枚が重なった状態で皿ネジに浮きが無いかの確認をしましょう。(皿ネジのサイズにより深さが変わります。詳しくは別途ご相談下さい)
- Q11 「圧入」板金製品での部品取付で困っています。バーリングよりも引張荷重やトルク強度があり、ナット溶接等によるコスト高にならない別の加工方法は無いですか?
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A
板金製品での部品取付用のタップ加工が必要な場合、大きく分けて3種類の工法があります。
- ① タップ加工(薄板の場合はバーリング加工と共に行う)
- ② ナット溶接(厚板にタップ加工した物を溶接により接合する場合も含みます)
- ③ プレスナット、スペーサー等を圧入
①の場合は主に板金製品通しの組立に使用します。薄板の場合バーリング加工との併用で有効ネジ山を確保します。取付け面はフラットに仕上がりますが裏側には出張りがあります。
②はナット等を溶接にて固定する為、強度の必要な取付けに最適です。ナットの種類も豊富にありますので大きいサイズのタップの場合に有効な加工方法です。 が、溶接による接合ですので表面処理などの処置が必要となります。 (塗装やメッキ等により溶接部の錆を防ぎます。)
③はプレスにより圧入し固定する工法です。圧入する母材に決められた径の下穴を開け、プレスにより圧力を掛けると母材がナット類に加工された溝やパイロット部に流れ込みロックされます。多彩な種類と形状があり薄板への加工も容易ですので部品の取付け方向を考慮し最適な製品を指定して下さい。機械的な抜き加工により下穴を開けるので精度が必要な部品取付けに効果があります。また、外観面への影響も無い為、処理無しの製品におすすめです。スペーサー類は様々な高さがあるので基板等の取付けにも最適です。取付けする部品の重量や用途、製品自体の仕様を踏まえた加工方法を選択して下さい。
展開に関するQ&A
『展開Q&A』を担当する、八巻直人です。普段はプログラマーとして、お客様から頂いた図面を元に CADを使い展開作業をし、NCプログラムの作成をしています。 普段の作業を活かし、“展開”や“板金”の事について初級編から応用編まで、Q&A形式にして随時更新していきます。また、お客様からの御質問に対しても、お答えしますのでお気軽にお問合せ下さい。
- Q1 展開とはなんですか?
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A
下の図のように、立体の形状を、平面状にあらわす事を言います。 お菓子などの箱を想像して頂くと分かりやすいと思います。
- Q2 つまり代とはなんですか?
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A
材料を折り曲げた時に生じる、「縮み」。材質、板厚、角度など様々な条件により変化します。(曲げ補正値や伸び代とも呼びます)
- Q3 展開寸法とはなんですか?また計算式等ありますか?
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A
下記の図をご覧下さい。一般的な90度曲げで説明します。 まず外寸法※1をすべて足し、「曲げ箇所×つまり代」※2を引いた数値が 展開寸法となります。
例 (50+50)-1.6※3=98.4が展開寸法。
- ※1 外寸法とは板厚を含んだ数値。(内寸法の場合は外寸法より板厚を引いた数値。例題の場合は外寸法50mm-板厚1mmなので49mmとなります。)
- ※2 例題では一箇所曲げですので「-1.6」となります。二箇所曲げの場合、「1.6×2=3.2」となります。
- ※3 90度曲げの場合、係数が『1.6』となります。この係数に板厚を掛けてつまり代を計算します。(例題の場合:係数1.6×板厚1.0=1.6)
鋭角及び鈍角曲げやR付き曲げの場合は計算式が違います。
詳しくはまた別の機会にお話致します。
- Q4 展開出来ない形状の時はどうすれば良いですか?
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A
筐体等で一体では展開できないものや、形状的に曲げ加工ができないものは、下の図の様に分割し小部品に分けて製作します。(分割した場合には溶接等での接合となりますので溶接の盛上がりによる取付け機器等の干渉にご注意下さい。溶接がダメな部分、盛上がりに寸法指定がある場合は図面表記を忘れずにしましょう。)
- Q5 ダレ面とはなんですか?
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A
外観面(体裁面)になる面をダレ面と呼びます。
穴開け加工時に打抜き方向側には金型による「ダレ」という現象が起こります。(板の角が丸みを帯びた状態です)また、反対面側の面にはバリが発生しますのでバリ面と呼びます。加工機の性能上、バリ面には細かな傷も付きますので外観面に使用するのはお勧めしません。塗装などの表面処理があれば細かな傷は消えますが無処理の物、メッキ処理の物等の場合は抜き方向の指定や用途等の表記をした方が良いでしょう。※裏面の傷がNGの製品も製作しております。お問合せ下さい。
- Q6 板金製作時の工程を教えてください。
-
A
- ① 基本的な工程順序 抜き加工⇒タップ⇒曲げ加工⇒溶接⇒検査⇒処理⇒検査
- ② 曲げ金型により、タップが変形する場合 抜き加工⇒曲げ加工⇒タップ⇒…
- ③ 曲げ後に部品取付が出来ない場合 抜き加工⇒タップ⇒曲げ加工⇒溶接⇒曲げ加工⇒…
- ④ 公差穴で曲げ型に穴がかかる場合 抜き加工⇒タップ⇒曲げ加工⇒リーマー通し⇒溶接…
上記②~④以外にも、製品に不具合が生じない様に工程順序の入れ替えなどをして加工できますので別途、ご相談下さい。
- Q7 抜き加工での、加工可能な最小穴径寸法を教えてください。
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A
金型抜きとレーザー抜きで寸法が違います。下表をご参考にしてください。
金型抜きの場合
- 材質
- ・SPCC、SECP等の処理鋼板
・アルミ、銅、その他の特殊鋼板 - ・板厚と同等 (例 T=1.6⇒Φ1.6まで)
- 穴径
- ・SUS材
- ・板厚×2 (例 T=1.5⇒Φ3.0まで)
レーザー抜きの場合
- 材質
- ・SPCC,SECP等の処理鋼板
・アルミ、銅、その他の特殊鋼板 - ・板厚と同等
- 穴径
- ・SUS材
- ・板厚と同等
- Q8 加工可能な最小穴径寸法以下の場合は加工できませんか?
-
A
位置決めをして、ボール盤でキリ通しをして加工できます。位置決め方法は、 以下の二通りがあります。
① ポンチ金型を深めに打つ方法・・・先の尖った金型で、材料にくぼみを作る。材料を貫通していないので、キリ通し時にずれてしまう事があります。
② レーザーピアスで加工する方法・・・材料にレーザーピアッシングする。材料を貫通させるので、キリを通ししやすい。
- Q9 組合わせて使用する製品に寸法公差を入れたいのですが公差記入の際に注意する事はありますか?
-
A
BASEとCOVERや箱物の内部仕切り板等、ギリギリの寸法での組立品では勘合を考慮した寸法公差が必要となります。基本的に外側の部品には「+」公差、内側の部品に「-」公差を入れます。寸法記入時には下の図の様に、板厚を踏まえ外側の製品は板厚の内-内に、内側の製品では板厚の外-外への寸法を記入しましょう。
また、部分的な寸法公差が必要な場合には通常の公差(一般公差)から外れてしまう部分が出る事があります。その場合、基準点からの寸法記入にするか、括弧寸法等での公差緩和をして下さい。
(基準点からの寸法記入にすると一番大きな寸法は一般公差も範囲が広いので公差内に収まる場合が殆どです。括弧寸法の場合も同様で括弧寸法では通常一般公差の倍と考えますのでこちらも範囲が広くなり公差内に収まります)
- Q10 部品取付け時のネジ頭の出張りをエンボス型で沈めようと思っています。エンボス型を指定する際の注意点等ありますか?また、他の成形型を使用する時に考慮する事柄等ありましたら教えて下さい。
-
A
カバーやパネル等を取付ける時にエンボス型で沈みを付け表面にネジ頭が出ない様にするのは良く使われる組立方法です。外観面に出張りが無いのでスマートな印象を持ちますし、安全面も考慮しています。 エンボス等の成形型を使用する時に一番考慮して頂きたいのは端面からの位置です。端面に近すぎると成形する時の圧力で製品の端面が変形してしまいます。中には加工順序等で変形を防ぐ事が出来る製品もありますが、殆どの場合は変形してしまう為、タレパン等で大きく加工しシャーリングによる切断を行います。多工程に渡る加工が多いと手間が掛かる分価格も上がってしまいます。寸法に余裕を持った設計をすれば結果的に早く安い製品を提供できます。弊社では様々な形状、サイズの成形型を保有しております。変形具合や端面からの最小寸法など蓄積されたデータを設計時にお役立て下さい。